山田ズーニー_あなたの話はなぜ「通じない」のか














 文章を書くことが苦手だという学生さんがたくさんいます。色々と話を聞いてみると、どうやって書いたらいいのか分からないと訴える人が多いんですね。そうか、書き方が分からないんだったら、レポートや論文の書き方を指南したハウツー本が売店に売っているから、使いやすそうなものを選んで、その通りに書いたらいいじゃないというと、どうも腑に落ちない顔をしている。

 あれ、そういう答えを期待していたわけではなかったかと思い、その表情をしげしげと眺めたのちに気づいたんですが、どうやら学生さんは書き方が分からないのではなくて、何を書いたらいいのかが分からないということだったんですね。ん~、この場合、どういうふうにアドバイスしたらいいんでしょうかねぇ。

 資料を読み込むことから始めてみようといっても、その学生さんはおそらく、資料を読み込んだ結果、何も思いつかなかったから悩んでいるんだろうと思うんですよね。もっと考えて、何かアイディアを捻り出しなさいと言うのは簡単ですけど、もしかするとアイディアの出し方自体、分かっていないのかもしれません。あるいは、なんとなくアイディアのようなものが頭に浮かんだとしても、それをどうやって論理をつなげて表現すればいいのか、まるで知らないということも考えられます。

 こうした学生さんの訴えを聞いているうちに分かったのは、文章の作り方や技法ではなく、もっと根本的な部分、たとえば、文章を書くとはどういう行為なのか、文章を書くためにどのような頭の使い方をすればいいのか、そもそも文章を書くことによって何を得ようとしているのかなどについて、きちんと学んでいない、もしくは真面目に考えたことがないということでした。

 今、述べたように、その根本的な部分について分かりやすくていねいに説明しているという点で、この本はとても実用的な内容になっています。とくに件の学生さんのように、何をどう書いたらいいのか分からないということで悩んでいる人は、この本から得るものがきっとたくさんあるはずです。

 文章を書くという行為は、他人とのコミュニケーションを支える手段の一つということを意識するだけでも、書くときの姿勢は変わります。中学や高校の国語教育のなかで作文を取り上げるのであれば、そのルールや作法だけでなく、こうした根本的な部分についてもしっかり教えてあげてほしいと思いますね。