石破氏の記者会見、ざっと見ましたが、議論の対立を招く問題や解決が難しい問題については「●●会議」を立ち上げるという案を連発しておりまして、そこで提起された政策が不評を買ったり、失敗に終わったりしたとき、自分に全面的な責任が及ばないようにしているなぁという印象を受けました。

 たとえば、石破氏は「地方創生と社会保障制度の再構築により消費の喚起を促す」と述べていますが、いずれの問題も少子高齢化の進展が根本的な原因であることは、今さら誰に聞くまでもなく明らかです。

 そうであるなら、石破氏は少子高齢化の進展をどのように食い止めるのかというアイディアを提示して、初めて政策論として意味があるわけですが、石破氏は「日本創生会議」や「社会保障国民会議」を作って、そのなかから出てきた意見を踏まえて政策を考えるということなんですね。すなわち、自分から発信するつもりはないということです。

 過去に同じような趣旨で作られた組織がいくつも存在するのに、今さらそんな組織を作ったところで、何の意味があるのかという疑問はとりあえず脇に置くとしても、こういうかたちにしておけば、いつか責任追及の声が上がったときに「あれは私の考えではなく、●●会議の意見によるものだ」と言い逃れすることができます。逆にうまく行けば、「あれは私のイニシアチブで行なった」と言えます。つまり、自分が絶対、損しないようにしているわけです。

 なぜ石破氏は、このように凡庸で空虚、しかも見方によっては、姑息とも思えるアイディアを出すのか。考えられるのは、多分、この人には、ブレーンと呼ぶことができる人材がまるでそばにいないんでしょうね。もしくは、仮にそういう人がいるとしても、せいぜい評論家レベルの人たちから知恵を借りているのでしょう。

 その程度のレベルの人たちに政策立案を任せると、フレーズは分かりやすくていいんだけど、内容をきちんとチェックすると、どれもパッチワークのようであり、目指すべき社会像が政策全体から伝わらないというケースになることが多いんです。かつては民主党、最近だと希望の党が、まさにそうだったでしょう? そして、まともな政策論争では勝ち目がないから、何をやり出すかと言えば政局的な争いです。もはやパターン化しています。

 安倍首相が総裁選への立候補を表明したことを受けて、石破氏は安倍首相との討論に意欲的ですが、現状として形勢逆転につながるような議論が展開できるのでしょうか。今のところ、考えられる政策のうち、もっとも現実的かつ合理的と思われるものを実行している安倍政権への疑問を投げかけるからには、より現実的で合理的な政策を提示しなければなりませんが、おそらくまともなブレーンなき石破氏にそれが可能かというと、はなはだ疑問です。

 それどころか石破氏は、今回の記者会見で北朝鮮の首都、平壌に連絡事務所を設置するというアイディアを披露する有り様です。「対話と圧力」という方針に則って、日米韓(韓国はやや微妙なところがありますが)が連携して北朝鮮の譲歩を引き出した経緯を無視して、日本が北朝鮮に連絡事務所を置くことになれば、アメリカの心証を害することは避けられません。東アジアの厳しい国際環境を考えたとき、その信頼喪失は日本の安全保障全体の危機を高めることにつながりかねないのであり、それが安倍首相の政策よりも現実的かつ合理的と言えるでしょうか。

 まぁ、自民党の国会議員だけでなく党員の方も、石破氏を支持する動きは低調らしいので、それは幸いなことだと思います。あとはマスコミ注目の小泉進次郎氏がどのように動くかということでしょうけど、ここで万が一、石破氏を支持するようであれば、自民党総裁への道は今後、完全に閉ざされるでしょう。もしそれが分からないようなら、その程度の人だということです。